レスポールの基礎知識(その3)

エレキギター

この記事は全4回中3回目です。

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今回は、現在ギブソン社で生産されているレスポールのラインナップについてのお話です。
歴史が長いものから新しいものまで、バリエーション豊かですよ。なお、参考までにこの記事を書いている時点でのおおよその新品価格も書いておきますが、あくまでも参考程度ですので、実際の価格とは異なる場合があることは、ご了承ください。

豊富なレスポールのラインナップ(その1)

レスポール・スタンダード

1952年に誕生

文字通りレスポールの標準タイプ。1952年から1957年に生産されたゴールドトップは、正式名称は単にレスポール・モデルというだけの名称だったのですが、1958年にサンバーストカラーが発売されてから、レスポール・スタンダードという名称になりました。

レスポールは女性にも似合う

使用されている木材は、ボディバックにマホガニー、トップにメイプル、ネックはマホガニーで指板はローズウッドというのが基本的な仕様です。(メイプルネックという仕様のものも一時期ありました。)1958年から60年の間に生産されたサンバーストカラーのものは超プレミア価格で取引されていますね。ホント超プレミア、ラクに家が買えます・・・w

重い重量が敬遠されたことにより販売が低迷し、1960年には製造中止に追い込まれますが、再販された1968年以降は細かな仕様変更を行いつつ生産が継続されており、2008年に大幅なモデルチェンジを実施しています。まあ、このモデルチェンジが仇となった感はあるのですが・・・。

ボディが一時チェンバード構造に

この時は、重量対策のためにボディの内部を大幅にくり抜いたチェンバード構造に変更(これによりこの頃のレスポールはソリッドギターではなくセミホロウギターに分類されます。)し、ネックの形も裏側の頂点を6弦側に少しずらしたアシンメトリカル(左右非対称)ネックを採用するなどの変更がなされました。

実はこのモデルチェンジは賛否両論が多く、結果的に旧仕様を維持したトラディショナル・シリーズの誕生に至っています。まあ普通に考えて、レスポール・スタンダードのボディをガッツリくり抜くとか、ユーザーからするとちょっとやって欲しくないですよね。

くり抜きは止めて!

2012年には再び大きなモデルチェンジを行い、指板が丸みのあるローポジションからハイポジションにかけて徐々に平らになっていく「コンパウンド・ラディアス」を採用し、ボディ内部のくり抜きもモダン・ウェイト・リリーフと呼ばれるチェンバード構造ほどには削らない加工に変更して、2008年モデルとトラディショナルの中間くらいの重量になっていました。

でもやっぱり、ボディをくり抜いたら、それはレスポール・スタンダードじゃないんですよ・・・。ウェイト・リリーフ自体は現行のギブソンのギターにも施されているものもありますが、それはスタンダードとは別のモデルでやるべきだと思うんです。

スタンダードでくり抜きをやると、ユーザーとしては騙された気分になりますよね。しかも、くり抜きを始めた当初は、ギブソンはそのことを黙っていたのですから、ちょっと何かおかしいですよね。

HPモデルとTモデル

2014年からは自動チューニングシステムのMin-Etuneも搭載し、2015年モデルからは進化版の「G FORCE」を採用するなど、先進的な機能も積極的に取り込む方針となりました。

さらに2016年モデルからはHP(ハイ・パフォーマンス)モデルとT(トラディショナル)モデルという、仕様の異なる2モデル体制に切り替えられました。

2つに分岐

HPモデルとTモデルは、細かな点で色々と仕様が異なるのですが、コンセプトとしてはHPは最新仕様を盛り込んだハイパフォーマンスモデル、Tモデルは伝統的な仕様にしたトラディショナルモデルという位置付けになっていました。

同じ名前のギターで全く仕様が異なるモデルが存在するというのも、ユーザー目線からすればわかりにくいですよね。

現行モデルは原点回帰

2018年モデルからは、ボディ裏面にコンター加工を施すなど、レスポールのイメージを打ち壊すような現代的な仕様へと変化します。しかし、もはや迷走極まれり、と言った感があり、さすがにこれはレスポール・スタンダードとは言えない感じ。

新しい発想を取り入れたギターを作ることには大賛成ですが、それは別のモデルでやればいいことだと思います。わざわざ無理にスタンダードの名を冠して、ユーザーを混乱させることは止めてもらいたかったですね。

そしてついにというか案の定というか、2018年にギブソンは経営破綻し、事実上の倒産となってしまいます。2019年には経営陣を刷新し、大掛かりなテコ入れが行われました。

ついにギブソン倒産

この際に大きく製品ラインナップが見直され、大きく分けて伝統的なモデルで構成された「オリジナル・コレクション」、新発想を盛り込んだ現代的な「モダン・コレクション」、匠の技を持つ職人たちによって製造される「カスタムショップ」の3つに再構築されました。(他にもアーティスト・コレクションなどがありますが、ややこしいのでここでは割愛)

現在(2026年)のレスポール・スタンダードはオリジナル・コレクションとして展開されており、基本的にウェイト・リリーフは廃され、50年代・60年代の仕様に極力近づけられています。価格が高騰した過去の反省から、パーツの標準化などの努力で価格の抑制が図られています。

やっと我らがレスポール・スタンダードが戻ってきた感がありますね。レスポールは美術品ではなく楽器であり商品なのですから、ユーザーの声を聞くという姿勢を大事にしてもらいたいものです。

実売価格

本家ギブソン製新品の価格は、この記事を書いている2026年1月時点で、主要モデルであるLes Paul Standard ’50sとLes Paul Standard ’60sは、概ね30万円~40万円程度で販売されています。決して安くはない価格ですが、近年の物価高騰を考えると、この価格も止む無しですね・・・。

レスポール・カスタム

レスポール・スタンダードの上位機種

1954年に発売されたレスポール・ゴールドトップの上位機種。発売当初のボディカラーはEbony(黒)のみでした。

現在でも黒いレスポール・カスタムは、”ブラック・ビューティー”という愛称で親しまれています。「タキシードに似合うギター」をコンセプトに、多層バインディングやゴールドパーツ、”スプリット・ダイヤモンド・インレイ”と呼ばれるヘッド部分のインレイなどの装飾が施され、高級感あふれる仕様になっています。

ブラック・ビューティー

レスポール・カスタムは、代表的なプレイヤーとしてジミー・ペイジが挙げられるのですが、私はなぜか福山雅治氏の顔が浮かぶのですw アナタは誰の顔が浮かぶでしょうか?

このカスタムもスタンダードと同様に1960年に製造が中止されたのち、1968年から再生産されるという経緯をたどっています。

使用されている木材は、発売当初はマホガニー単板ボディにマホガニーネック、エボニー指板でした。68年の再販時にはボディがマホガニーバック+メイプルトップに変更されていましたが、現在生産されているオリジナル・コレクションのモデルは、このマホガニーバック+メイプルトップボディにメイプルネックとなっています。

指板はエボニーが使用されていますが、一時資源の枯渇により、一部のモデルにローズウッドや「リッチライト」と呼ばれる人工合板材が代替として使用されていたこともあります。この「リッチライト」は2019年のモデル統廃合の際に廃止され、現在のギブソンのギターには採用されていません。うむ、それで正解。

Les Paul Custom 70s

カスタムシリーズは、2005年から2018年まではギブソン社内に設置された高級品専門工房「カスタムショップ」での生産に限定されていましたが、2019年からはLes Paul Custom 70sというモデルがオリジナル・コレクション内でレギュラーモデルとして製造されています。

ボディカラーはこの記事を書いている時点では黒のみのようですが、以前は白も製造されていて、非常にエレガントなルックスで人気が高いですね。新品の価格は、50万円~60万円くらい。うむ、高い。

ギターは基礎が肝心

レスポール・ジュニア

廉価版レスポールとして登場

1954年にレス・ポールの廉価版として発売されたのが、レスポール・ジュニア。ジュニアもスタンダードやカスタムと同様に1960年に一旦製造が中止されています。ただ、再販されたのはスタンダードなどよりも少し遅く、70年代に入ってからでした。

ピックアップはP-90が1つのみでコントロールもトーンとボリュームだけというシンプルな仕様で、ボディ表面もアーチトップではなくフラットトップになるなど、徹底してコストダウンが図られています。正直、ソリッドボディで電気信号で音を発生させるエレキギターにおいて、アーチトップ形状にどれほどの意味があるのか、私個人は懐疑的に思っていますので、フラットにして値段を安くするというのは大賛成です。

この仕様のため同じレスポールの名を冠していながら、ジュニアはスタンダードなどとは全く違う鋭いサウンド特性を持っており、事実上レスポール・スタンダードとは全く別物のギターという認識がユーザー間で定着しています。ジュニアの音の方が好みだというアーティストも多いですね。私のイメージとしては、フェンダーのテレキャスターに似た方向性のギターという印象があります。

ボディとネックはマホガニーが使用されており、指板はローズウッド。製造中止前の58年にはダブルカッタウェイモデルも発売されていますね。廉価版とはいえ、発売当時に使用されていた木材(ホンジュラス・マホガニーとブラジリアン・ローズウッド)は、現在ではもうほぼ手に入らないものとなっていて、同じものを今作ろうとすると、とんでもない価格になってしまうようです。というか下手に作ろうとすると、法律違反で捕まりかねませんw

そういう事情もあり、現在では発売当時の仕様に近い物が、カスタムショップ及びレギュラーラインで製造されています。新品の価格は、レギュラーライン品のオリジナル・コレクションなら20万円くらいといったところでしょうか。さすがに今は廉価品とは言いにくい価格ですね。(汗)

レスポール・スペシャル

後から生まれたけどジュニアの兄貴分

スペシャルもカッコイイ!

ジュニアのピックアップを2基にしたバージョンです。1955年に発売されたスペシャルは、仕様的にはジュニアよりちょっと高級感があり、ジュニアより後に登場していますが兄貴分的な存在ですね。製造中止や再販の経緯はジュニアと同様で、使用木材やダブルカッタウェイモデルが存在する点も同じ。

スペシャルのダブルカッタウェイモデルは、その後SGへと発展していきます。スペシャルのボディカラーはTVイエローと呼ばれる色が定番となっているのですが、これは発売当時の白黒テレビの映りに配慮したカラーだと言われています。

例えば白いギターを持って黒い服を着た人がTVに出ると、ギターは真白になって光が飛んだようになり、人の方はただひたすらに真っ黒に映るということになります。これを防ぐために反射を抑えた色が採用された、ということのようです。

なんとも時代を感じさせるお話ですねー。そう言えば、78年のTVアニメ「機動戦士ガンダム」のオープニングで、主人公のアムロが青いノーマルスーツ着用しているシーンがあるのですが、本来の白いノーマルスーツだと、白いテロップの文字が見えにくいという理由で青くなったという話を聞いたことがあります。昔のTVには今とは違う配慮が必要だったんですね。

おっとまた脱線w 気になるレスポール・スペシャルの価格は、オリジナル・コレクションで20万円~30万円くらいかなと思います。

まだまだレス・ポールには色んなバージョンがあります。次の機会には、他のモデルもご紹介していきますね!

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