この記事は全4回中1回目です。
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前回のストラト編に引き続き、今回からはレスポール編です。
レスポールは開発者の名前

ギブソン社が1952年に、同社初のソリッドギターとして発売したのがレスポールです。当時既にフェンダーのテレキャスターが発売されており、巷ではかなり好評を博していました。それに対抗するためにギブソン社が生み出したのが、レスポールなのです。
レスポールという名前は、共同開発者であるレス・ポール氏の名前を冠したものであり、正確には彼のシグネチャー・モデルという位置付けになります。
従って正式な名称も、元々はレス・ポール・モデルというのが正しい(ギターのヘッド部分に書いてあるモデル名はLes Paul MODELです)のですが、現在では「モデル」は言わずに単にレスポールという呼び方が定着していて、ギブソンの日本支社であるギブソン・ブランズ・ジャパン㈱が運営しているサイト「GIBSON.JP」でも、この呼び方が多く使用されています。
要するにバッグのバーキンみたいなもんですね!自分の名前がついた製品が世界中で大ヒットするとか、なんかうらやましい・・・。多分人類が滅びない限り、レスポールの名前が忘れ去られることはないでしょうからね。
’58年~’60年製はマンションが買えるほどの値段

1952年から1957年の間に生産された初期型は、ゴールドトップと呼ばれる金色のメタリック塗装が施されていましたが、1958年から1960年の間に生産されたものは、それまでの単一色の塗りつぶしから、サンバースト塗装と呼ばれるシースルーフィニッシュに変更され、表面のメイプルの杢目が見えるようになっています。
1952年から1960年の間に生産されたレスポールはオリジナル・モデルと呼ばれていて、コレクターの間では高値で取引されており、特に人気が高いサンバースト塗装の58年型~60年型は、今ではなんと何千万円という値を付けるに至っています。正直、そんな値段のギターをもし手に入れられたとしても、壊すのが怖すぎて弾けないですよね。(笑)まあどう考えても、手に入るわけないんですけどね・・・
伝説的ハムバッカーP.A.F.を搭載
レスポールの特徴としては、まずはピックアップが挙げられます。発売当初はP-90というシングルコイルのピックアップが採用されていましたが、やはり何と言っても1957年から採用された「P-490」が有名。P-490という型番よりも、P.A.F.(パフ)と言った方がわかりやすい方もおられるでしょう。

シングルコイルのピックアップにはノイズが乗りやすいという欠点があったのですが、コイルの巻き方向を反対にしたピックアップを組み合わせることでノイズを軽減させることに成功したのが、新型のP-490でした。
これが、いわゆるハムバッカーと呼ばれるピックアップの誕生になるわけですが、当時のP-490には特許出願中を意味する”Patent Applied For”と書いたシールが貼られていました。この頭文字を取って、P-490にはP.A.F.という愛称が付けられたんですね。
ノイズを軽減させたことの副産物として、甘く太いサウンドになり、音量も大きくなりました。レスポールがストラトよりもパワフルでロック向きと言われるのは、このハムバッカーを搭載していることがその理由です。
ただし、このP.A.Fが伝説的になりすぎて、新しく発売されるハムバッカーは猫も杓子もP.A.Fを基準にした音作りするようになったと私は考えています。特に楽器というものは、ヴァイオリンのストラディバリウスの様に、過去の名器の幻影に踊らされがちなように思うのです。それが悪いことだとは言いませんが、ギターは楽器であると同時に工業製品でもあるので、イノベーション精神も大事にしていって欲しいですね。
杢目が美しいアーチトップ形状
またレスポールは、ストラトやテレキャスが従来のギターの形状を根本から見直したのに比べると、比較的トラディショナルな趣を残しています。

ボディはバック部分にマホガニー、トップ部分にはメイプルを使用し、表面の形状はバイオリンのようなアーチトップ。サンバーストカラーの採用により杢目が見えるようなったため、意匠性の向上を狙って、トップのメイプルは板を真ん中から切り開いたブックマッチ構造となっています。これにより左右対称の美しい杢目になっているんですね。
ギブソンのレスポールはこのボディトップの杢目の美しさによって価値が結構変わってきたりします。楽器としての性能とは関係ないのですが、ヴァイオリンのような歴史の長い楽器と同様に、見た目の美しさも大事なんですね。個人的にはフェンダーのギターみたいにベタッと塗りつぶした方が、気を遣わなくていいので好きなんですけどねー。傷がいっぱいついても、再塗装すれば新品同様に戻るし。
エリック・クラプトンにより再びスポットライトが当たる
これほどまでにギブソンが本気で作り込んだレスポールでしたが、最大の欠点はその重量でした。事実、当時のギタリストには、ロックのような音楽はまだあまり浸透しておらず、ジャズやカントリーだと音がパワフル過ぎる点や、長時間演奏すると体力を消費してしまう重量が敬遠され、1960年には遂に生産中止に追い込まれています。実際、現行品でもレスポールは重く感じる個体が多いと思います。
その後、ギブソンは改良型のSGへと軸足を移すことになります。このSGがまた軽いんです。軽すぎてヘッドの方が下がってきます。間はないんかい!というツッコミを入れたくなるほどです。そういう極端な変更もあって、SGはレスポールの後継機とはちょっと違うなという感じになり、レスポールの原型が薄れていっていました。
その状況を神様エリック・クラプトンが一変させます。
彼が、ブルースブレイカーズのアルバム”Blues Breakers with Eric Clapton”の中で披露した、レスポールとマーシャルアンプの組み合わせによる、それまでになかった強く歪んだギターサウンドは「極上のサウンド」と絶賛され、これをきっかけにしてレスポールの復活を切望する声が高まります。
そしてそのファンの声を受けたギブソンは、レス・ポール氏と再契約(SGにレスポールの名を付けようとしたら、氏に拒否されて破談になっていました)の上、1968年にスタンダード、カスタムの両モデルを再発するに至るのです。
ストラトのイメージが強いクラプトンですが、彼はレスポールの救世主でもあるんですね。
(その2)に続く...


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